PTCOG56に参加しました
先日千葉と横浜で開催された、PTCOG56(56th Annual Conference of the Particle Therapy Co-Operative Group)に参加しました。Educational SessionとScientific Meetingを合わせると6日間に及ぶ、長い学会でした。
この学会に参加する前の僕の認識は
①日本で開かれるのだから参加者の半分は日本人。特にEducational Sessionは日本人の若手ばかりだろう。
②2部屋しか使用しない、AAPMより規模の小さい学会である。すなわち重要度・研究の質で劣る。
③僕がいる施設はこの分野で世界を牽引しており、名実ともに最高峰である。
書いててため息が出るほどの無知でした。
まず、Educational Sessionの時点で参加者が外国人ばかりで驚きました。僕の曖昧な記憶から国別の参加者を多い順に並べるなら、
アメリカ->中国->ヨーロッパ(ドイツ等)->日本->タイ->台湾->韓国->その他
でしょうか。日本人の割合の少なさで言うならば、2015年に京都で開かれた、ICRR以上ではないかと思います。
規模が大きい学会が良い学会だ、という認識も改めるきっかけとなりました。これまで参加したどの学会よりも、参加者間での「コンセンサス」を形成しようとする意識が感じられました。規模が大き過ぎないことで、個別の問題や疑問を汲み取り全体の発展につなげるという構造が明確だったように思います。これまで、学会とは「最新の研究を発表する場」という認識が自分の中では主でしたが、「議論を通して研究方針を決める場」としての意義を強く感じました。PTCOGには「X線治療」という強力なライバルに対抗するために、協力し合う体制が整っているのかもしれません。
PTCOG中は学会側から提供されるすべてのイベントに参加しました。具体的には、
放医研見学->放医研でパーティー->千葉から横浜へのバス移動->レセプション->Gala Dinner->神奈川がんセンター見学
です。それぞれのイベントで新しいつながりができましたが、自己紹介として自分の施設名・ボスの名前を言っても、あまり認知してくれないことにとても低いことに驚きました。一方で、僕の施設が研究してきた技術・概念の名称は、よく知られており、世界の研究者の頭に残るのは、研究者の名前よりも、研究の内容なのだということを感じました。
僕の理解では、この分野で世界をリードするトップ研究者は、MGHのPaganettiだと考えていました。しかし今回、Tony Lomaxの存在を知り、(少し話し、)かなり衝撃を受けました。Lomaxかっけえ。イギリス英語かっけえ。Lomaxの教え子イケメン。
PaganettiとLomax、陰と陽のような(勝手な印象ですが)2人が仲良く会話をしているこの分野は、これからも発展するのだろうなと思いました。(ちなみにLomaxは若い頃、独力で治療計画装置をコーディングしたそうです。)
僕自身の研究について書くならば、自分の発表自体は可もなく不可もなくという程度でしょうか。発表を聞いていた人の印象には残ったようで、個人的にコメントをくれた人が多かったのは、嬉しかったです。
学会期間中には他の大学の先生との研究ミーティングもさせて頂き、収穫が多かったように思います。技術的な側面からのコメントをいくつも得られ、結果の解釈ができてきました。
最後に、この分野で感じた粒子線治療のトレンドについてです。
Range uncertainty、SOBP内でのLETの変化と治療計画への応用、CBCTを用いたAdaptive Radiotherapy等は非常に関心の大きい分野だと感じました。
一方初めて知ったトレンドとしては、粒子線治療を免疫療法と組み合わせることが新たなトピックとして上がってるようで、少し勉強してみようかなと思いました。