Chantori Blog

Medical Physics / Monte Carlo Simulation / Medical Image Processing

科学・放射線医学のおすすめPodcasts(2018年版)

私は英語力の中で、特にライティング力が弱点です。そこで、「自分の長所であるリスニング力を活用してライティング力を強化する」という方針で、英語のポッドキャストを継続的に聴いています。

具体的には、科学分野の英語を聴く機会を増やすことで、論文に頻繁に用いられる構成や表現を学ぶことを目指しています。この記事では、これまで4年ほど色々な番組を聴いてきた中で、科学と放射線医学の領域で良質なポッドキャストをおすすめ順に紹介します。

目次


【科学全般】
  1. Nature Podcast

    ライティング力を鍛えるという本来の目的から考えると、Nature Podcastは王道。ポッドキャストでありながら論文の語調をあまり崩さない点が良い。Nature姉妹誌に限らず、重要な論文であれば競合雑誌であるScienceやCellなどからも論文を紹介する点に、一流誌としての矜持を感じる。

  2. Hello PhD

    大学院生・ポスドクが持ちがちな、論文執筆・進路・研究生活、といった疑問や悩みに対し、2人の研究者がゲストを招きながらアドバイスしていくポッドキャスト。参考になるテーマがとても多い。毎回ホストがレアなビールを持ち寄り、そのビールについて熱く語りながら始めるのが恒例。パブで2人の研究雑談を同じテーブルで聴いている気持ちになる。

  3. CNN 10 (video)

    報道と科学は文体・構成が異なるが、要点を簡潔にまとめる点で参考になる。アメリカに限らず世界中の重要なニュースを取り扱う。日本で大きなニュースになる2, 3日前からこのポッドキャストで報道されているニュースはよくある。日本に関するニュースの内容が(私個人の視点からは)偏っていることから、アメリカ(CNN)の日本観を推察できる。毎日配信され、未視聴が溜まると容量を圧迫するので、1.25倍速で聴くようにしている。
放射線医学】
  1. Radiology Podcasts

    https://pubs.rsna.org/journal/radiology

    北米放射線学会 (Radiological Society of North America: RSNA)の公式ポッドキャスト。聴きやすい。毎回の配信で勉強になる論文があるため、ポッドキャストで聴いて興味を持つ論文を検索して深く調べる、という流れができやすい。医学物理に関する話題もあり、医師の目に物理や機械学習がどのように映るのかを学べる。


  2. Physics World Weekly Podcast

    IOP Publishingが母体のPhysics Worldが運営する、物理に関するポッドキャストPhysics Worldには医学物理部門があるので、時々医学物理の話題がある。今年はAAPM Annual Meeting 2018の特集レポートもあった。医学物理以外の物理の分野では何が話題になっているのかを知るのにも良い。医学物理に限らず、物理全般に対して興味を持つようになった。

  3. ASTRO Journals

    ASTRO Journals

    ASTRO Journals

    • Various
    • Science
    • USD 0

    米国放射線腫瘍学会 (American Society for Radiation Oncology: ASTRO)の公式ポッドキャスト。医師の視点から論文の要点と解説が聴ける点が良い。前述のRadiology Podcastsと比較すると全体的に劣ってしまい、少し残念な気持ちになる。

Year1: Opportunity

Longwood Galleriaのフードコートにある中華料理店 "Dragon Bowl" でランチを買うと、おまけにフォーチュンクッキーがついてきます。このクッキーのおみくじに書かれた、チープで心に全く響かない格言をチェックすることが、私の楽しみの一つです。
初めてのSkype面接 (aka 保護者会を控えたこの日、おみくじにはこう書かれていました。

“Don’t be afraid to take a chance when the opportunity of a lifetime appears.”

イムリーなメッセージですが、目の前のopportunity “of a lifetime” かどうかは、どうすれば判断できるのでしょうか?

ボストンに来て1年が経ちました。今言えることは、この留学は間違いなく ”opportunity of a lifetime” であった (ある) ということです。

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階段を降りるとそこには研究ポスターと日本食が...

今月は、JSPSワシントン研究連絡センター主催の "The 3rd Japan-US Science Forum in Boston 2018" に参加しました。今回のテーマは”The Science of Sleep”で、筑波大学の柳沢 正史先生、東大/理研の上田 泰己先生が講演をされました。また、アメリ(の主に東側)にいる若手研究者らによるポスターセッションもありましました。今回のテーマが睡眠であったためか大半のポスターがバイオ系の発表でしたが、おもしろい解析をしている発表がいくつかありました。

この時期のアメリカの大学院は、Midterm Examのピークです。医学物理のクラスを受講しているポスドク達も試験と課題で忙しそうにしています。
私の施設ではポスドクが多いので、ポスドクをサポートする体制が整っているように感じます。一人ひとりのポスドクに、分野の垣根を超えた経験年数の多いポスドクがメンターとして配置され、アドバイスCVや申請書の添削等を定期的に受けています。

Thanksgivingにはとても寒い中、おいしいチキンとチェリーパイをごちそうになりました。New England地方では、Thanksgiving史上最寒を記録した場所がいくつかあるようです。ボストンの最低気温は-10℃ (feels like -17でした。

今からこの寒さでは、先が思いやられますね。ボストンの昨年の冬は100年に一度の大寒波でした。

 

1年間の予定だった留学を、少しだけ延長させて頂くことになりました。ご協力頂きました日本と米国の皆様に感謝申し上げます。

Month11: Winter is coming

周りにはNetflix等でドラマや映画のShowを楽しむ人がとても多く、食事や飲み会の席では最近見ているShowの話題がよく出ます。Game of ThronesWalking Deadは定番中の定番ですが、それ以外に各人が定番に左右されないお気に入りをもっている点が面白いと感じています。

 

実験のラウンドが進むにつれ、この研究のゴールがかすかに見えてきた感じがあります。しかしそれがゴールなのか、それとも新しいスタートになるのか、先が読めません。そんな不確実な雰囲気に私は興奮しています。そして研究チームの一員として、役割を果たせていることに充実感を得ています。
実験がiterateされていくのに合わせ、解析プログラムを発展させていく必要があります。そしてそれを見越して、拡張性を損なわないようなコーディングを初期段階から心がけています。

自分の研究領域が広がり、関わる研究者も急激に増える中で、自分の処理能力を超える量の仕事を抱えるようになりました。すべての仕事を満足にこなすためは、自分があと2人必要だなと感じています。寝る間を惜しんで研究をしているわけではありませんが。

今月はISMRM前会長のDaniel Sodickson先生がNYUから招待され、講演されました。

f:id:chantori:20181031115746j:plainBasilique Notre-Dame de Montréal

 

ボストン・レッドソックスが、2013年以来5年ぶりにワールドシリーズを制覇しました。2013年はボストンマラソンで爆弾テロがあった年です。悲しみから立ち直るため”Boston Strong”の合言葉が生まれ、レッドソックスもこの合言葉のもとワールドシリーズを戦ったという印象的な年です。この合言葉は今でもラボの先生方のベストに刻まれています。

2013年の私は、毎週末野宿をしていました。次にレッドソックスワールドシリーズを制覇する時、私はどこで何をしているのでしょうか。

Month10: Same Page

 新学期が始まり、1年の始まりの行事や交流イベントが多く開かれています。私は部門内の交流を促進するためのピクニックでボスの子どもたちと戯れたり、ボストンに来て10ヶ月目にもかかわらず大勢の前で自己紹介をしたりしました。

 非ネイティヴ英語話者を対象とした、英語クラス "English as a Second Language (ESL) Course"が始まりました。近隣の語学学校の先生が来て教えてくれますが、英語の上達というよりは、様々な国の人と物事をどのようにうまく前進させて行くか、という方の負担が今のところは大きいです。
 ポスドクを対象とした医学物理のCertificate授業も始まりました。医学物理、イメージング、放射線腫瘍学の授業を各1コマずつ毎週とっており、宿題にも追われています。また、ボストン特有の事情としては、授業がMGHもしくはBWHで行われるため、毎回の出席者の約半数が1時間弱の移動を強いられるようです。

 ドイツから来られた先生の講演を聞きに、公的には初めてMGHへ行きました。室内を見渡すと、私が名前も顔も知っている先生、顔は見覚えがあるもののMGHにいるとは知らなかった先生等、有名な方が多くおられました。MGHのスター研究者や医学物理士レジデンスに囲まれて、ピリピリした緊張感を(おそらく必要以上に)感じました。もし留学先の候補のひとつとしていたMGHのラボに行っていたとしたら、どのような人生になっていたのでしょうか。
 講演ではスライド・音声がリアルタイムでストリーミングされており、URLさえ知っていれば、同じ空間にいなくても講演を聞くことができるようになっています。このような仕組みは大から小まで多くの講演において適用されており、アメリカの研究環境の素晴らしい点の一つだと思っています。

 

 私は今の研究段階を、共同研究者らとSame Pageにいることが特に重要なステージだと捉えています。そこで今月は周りとの意思疎通を増やし、会話の長さも意識的に増やしました。飲みに行く回数も自然と増えました。結果的にこの一ヶ月は、アメリカに来てから最も人と話した月となり、この数ヶ月間感じてきたスピーキングのスランプからはやっと脱しつつある気がします。しかしスピーキングを次のレベルに押し上げるための効果的な勉強法が分かりません。それは、自分のスピーキングに不足している部分を十分理解していない、ということになるのかもしれません。

 こちらの人が笑うタイミングやその理由を注意深く見ていると、日本とは少し異なる事に気が付きます。ボケとツッコミというのは基本的になく、ウィットの効いた皮肉が好まれることが分かってきました。誰かが言った皮肉に被せて皮肉述べるとポイントが高いようです。過大な表現を使って自分で自分を貶める、ボケに近いテクニックもあります。一般にアメリカンジョークと呼ばれるものにはまだ出会っていません。

f:id:chantori:20180930235914j:plainケープコッドのサイクリングロード

 ニューヨーク・ヤンキースを生で見た感想は、傑出したスター選手たちがピリピリとした緊張感を放っているな、という事です。そういう点で、ヤンキースの選手たちにMGHの研究者の姿を重ねていた私は、自身がnerdであるということ自覚する必要がありそうです。レッドソックスはこの日も負けました。

Month9: Night is short

長かった日照時間が少しずつ短くなってきましたが、ボストンの夏はもう少し続きそうです。新学期が始まり、研究室には新しいメンバーが加入しました。家のルームメイトは大半が入れ替わり、フレッシュな雰囲気です。

 日本では東京女子医科大学の入試の問題が話題ですが、同じ男女平等(東京女子医科大学の問題はそれだけではありませんが)という観点では、私の周りではサウジアラビアとカナダの間の外交問題が話題です。

 この外交問題で特に話題になっているのは、両国間が予想以上にヒートアップし、サウジアラビア政府が、カナダで学ぶ学生や通院する患者を全員帰国させる措置をとることを決めたことです。あと1年でカナダの博士課程を卒業予定だった方が、博士号を無事取得できるのかも不透明な中、短縮卒業を目指してとりあえず博士論文の執筆を開始した、という話を聞いています。

 今月はAAPM Summer Schoolと、続いて開かれたAAPM Annual Meetingに参加しました。

 Summer Schoolは例年、Annual Meetingと別の場所で開催されますが、今年はAnnual Meetingの直前に同じナッシュビルで開かれました。世界各地から200人弱が集まり、今年のテーマ”Image-Guided Radiation Therapy”ついて、基礎を中心に広く学びました。また、このSummer Schoolで仲良くなった方々をきっかけにして芋づる式にネットワークが広がり、数日後のAnnual Meeting中、そしてボストンに帰ってからも、新しい研究仲間との素晴らしい出会いがありました。2019年のSummer Schoolは、Annual Meetingとは別の都市でやるそうです。

 今年のAAPM Annual Meetingは、私にとって最高の学会でした。ボストンに来てから研究分野が広がったことで、参考になる発表がとても増えたように感じました。しかし理解できる発表が増えるにつれ、次はそれでも理解ができない部分に関心が移るようになりました。これは私の場合は臨床的な数値や機械学習などでした。

 ボストンに来た当初の目標は「ボストンでの研究をAAPMで発表すること」でした。私の発表には、日本・ボストンの同僚達、Summer Schoolでできた友人達など、多くの方が聞きに来てくれ、目標を達成できた喜びを噛み締めました。また、私を知らない人が発表を聞いて私に声をかけてくれるようになったり、スライドと参考文献を送ってくれというメールを後日頂いたりと、発表の効果を少なからず実感しました。

 Nashvilleは小さな都市です。Summer Schoolの友人達と外を歩くと日本からの先生方に会い、ボストンの同僚達とバーへ行くとオーストラリア・ニュージーランドの物理士達(Aussie, Kiwiと呼ばれている)と仲良くなり、ラインダンスを踊っていたらポスドクに来ないかと誘われる、不思議な縁が続く日々でした。いつか読んだ「夜は短し歩けよ乙女」を彷彿とさせる、そんなMusic Cityの夜でした。

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 今年のボストン・レッドソックスは記録的な強さでが、「私が観戦に行った日はレッドソックスが勝てない」という記録を未だに更新中です。その確率を計算すると2%でした。

Month8: 4th of July

 74日は、アメリカの祝日(独立記念日)でした。ボストンは独立運動の中心地であったこともあり、この祝日の盛り上がりは全米一と言われています。私は誰もがこの日を”Independence Day”と呼ばず、代わりに”4th of July”と呼ぶ事にとても違和感を感じていました。ボスからのメールの最後には

“Have a great 4th of July!”

と書かれていましたし、行きつけのCVSBolocoに貼られていた短縮営業の張り紙にも、”4th of July”が使われていました。なぜChristmas”25th of December”と呼ばれないのに、Independence Dayはこう呼ばれるのでしょうか?友人たちからは、

  1. 他の祝日は”○月の第月曜日などと毎年変わるのに対し、この日は変わらないから。(キング牧師ジョージ・ワシントンの誕生日の祝日ですら第3月曜日とされている)
  2. イギリスに配慮しているから
  3. 日にちで呼ばないと覚えられないから

といった回答をもらいました。f:id:chantori:20180725093448j:plain というわけで夕焼けのきれいだった4th of Julyは、MITに通うKiriの家の屋上から花火を眺めました。昨年大曲や稲川で見た花火を思い出してセンチメンタルな気分に浸っていましたが、短時間に集中放火するアメリカの花火にすぐに吹き飛ばされました。

 この時期の欧米はバカンスシーズンです。ラボから人影がなくなる時期、バカンスを終えてまたラボが騒がしくなり始める時期、といったタイミングを理解しておくことは、研究の様々な面で役立つかもしれません。例えば論文の投稿や査読のタイミング、この時期の学会に参加する欧米の研究者のメンタリティ、などを考えるヒントになるのではないでしょうか。

 7月末には、AAPM Annual Meetingがあります。私のいる部門の若手は10人弱が口頭発表をします。AAPM直前の2週間は、毎週開催の医学物理カンファレンスが若手の発表練習に振り当てられました。私もポスドクに混じり、ボストンに来て最初に取り掛かった仕事について、発表練習をしました。また、他の州にいる共同研究者とは、Skypeで発表練習をしました。
 一連の発表準備を通して改めて感じるのは、周りの方々の「アドバイス力」の高さです。他者に対して「積極的で建設的」な指摘をするという姿勢を強く感じます。またこれは以前にもブログで触れたことがありますが、先生方はとにかくよく人を褒めます。部局長の先生はこの日の夕方に、発表した若手一人ひとりのデスクを訪れ、褒めちぎっていました。

chantori.hatenablog.com

 共同演者の方々からは、質疑応答の練習など専門的な準備から、Powerpoint上での聴衆の注意の導き方など一般的な発表手法まで、とても手厚い指導を受けました。感謝の気持ちと共に、周りのベクトルと自分のベクトルをうまく合わせられている事への充実感もあります。

 いつの間にか私の主戦場となってしまったAAPM Annual Meeting、今年はどのような学会になるのでしょうか。今回の学会を通して、自分がボストンで過ごしたこの8ヶ月の成長を試すことができるのではないか、と期待しています。

2018/08/15追記
BostonのMuseum of Fine Arts (MFA) では、"4th of July"ではなく"Independence Day"と記載していた、という情報を頂きました。MFAの名誉のために、追記しておきます。

Month7: We’ll always have Paris

いつの間にか6月も終わりです。今月はパリで開かれたISMRMに参加しました。パリは素晴らしい街です。ISMRMは初めての参加でしたが、色々と感じるものがあったのでいずれ文章にしようと思います。

 この時期の米国は、人の出入りが激しいです。今月は医学物理士レジデンスに採用されたポスドクや、レジデンシーを終えたポスドクが去っていきました。送別会には医学物理部門にとどまらず、医師や看護師など多くの方が訪れ、恒例のアイスクリームを食べながら卒業を祝福していました。彼ら彼女らが去っていった穴には新しいポスドクが加入し、研究チームの再編も行われています。私のデスクの位置が少しだけ格上げされました。

 今月は英語記事を1本書きました。なぜ私達が英語を勉強する必要があるのか、ということについて、私が以前から感じていたことについてです。

 この1ヶ月、自分の考え方に大きな変化があったような気がします。特に博士号取得後のキャリアについては、これまでの自分があまりにも近視眼的であったかもしれない、と感じています。心に余裕ができたのでしょうか。この先の10年単位で、自分がすべき仕事とは何なのか、僭越ながらもそんな事を考えました。f:id:chantori:20180701112152j:plain