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羽根田卓也とイチロー

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現在開催中のリオオリンピックの、カヌースラローム男子カナディアンシングル部門で、日本代表の羽根田卓也選手が見事銅メダルを獲得しました!今回はこのアジア勢初の快挙について書きたいと思います。ちなみに僕の身近なカヌー団体には地元のテレビ局から取材のオファーが来ました。

www.asahi.com

 

カヌースラロームカナディアンシングルとは

まずカヌーとは、1本のパドル(水を掻く棒)を使って前に進む船のことを言います。ボートと混同されがちですが、ボートにはパドルが2本あり、さらに後ろ向きに進む点が異なります。広くカヌーと言っても、カナディアン、カヤック、ラフティング等、様々な種類があります。この中でカナディアンとは、パドルの片方にのみ水掻きがついており、漕ぎ手は船の中に正座して漕ぎます。

次にスラロームとは、複数あるカヌーの種目の中で唯一オリンピック種目に採用されているものです。簡単に言うと、川に張られたゲートを番号ごとに下るタイムトライアルです。写真を見ると分かる通り、川には緑のゲート(アップゲート)と赤のゲート(ダウンゲート)が合計20本前後あります。緑のゲートは川の上流から下流へ、赤のゲートは下流から上流へと通らなければなりません。ゲートを通る際にゲートに触れてしまった場合は2ペナ(ゴールタイムに2秒の加算)、ゲートを通れなかった場合には、50ペナ(ゴールタイムに50秒の加算)となります。すなわち、1本でもゲートを通れなかった場合には、もうメダル争いは望めないわけです。(今回のオリンピックでは、上位4人は1つもペナルティを出しませんでした。)よってカヌースラロームという競技は、激流の中を縦横無尽に漕ぐパワーと、すべてのゲートを正確に通るテクニックの両方を要するスポーツということになります。

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(http://london.worldchampionships.events.slalom.canoeicf.com/general-info/about-canoe-slalom)

 

羽根田卓也選手とは

マツコデラックスの番組でイケメンと紹介されたことがにわかに話題になっています。また、親友との熱い友情もメディアには紹介されています。しかし羽根田卓也選手は、日本カヌー界ではそういう話題以前から、実力によって崇められてきました。(また、マツコがハネタクと略すよりも前から、羽根田選手は大勢のカヌイストからハネタクと呼ばれていました。)羽根田選手ついて詳しく知りたい方は、ググッてください。

 

この銅メダルがなぜすごいのか

カヌースラロームは競技人口が少ないので、日本のトップレベルに達するのは、他の種目と比べるとさほど困難ではないのかもしれません。しかし羽根田選手は、日本のカナディアンカヌースラロームのトップとして何年も君臨しただけでなく、この競技のメッカであるスロバキアに渡り、10年間修行を重ねました。テレビではわかりにくいですが、自分の体よりもずっと大きな水の流れの中でカヌーを操らなければなりません。そのためカヌー競技において、パワーは最も重要な要素であり、体格が優れる欧米選手は圧倒的に有利であると言えます。この身体的な差を埋めるために、羽根田選手は正確な技術を身につけました。

 

僕は羽根田選手の漕ぎを見ていて、先日メジャー3000本安打を達成したイチロー選手を思い出してました。イチロー選手の安打を量産する巧みなバットさばき、ストイックな姿勢は見る人を魅了してきました。羽根田選手も技術と姿勢の両方を兼ね備えた素晴らしい選手ではないでしょうか。

 

羽根田選手は次回の東京オリンピックを33歳として迎えます。この年齢はスラローム界では完全なベテランの域でしょう。ホームの声援と熟練のテクニックで、もう一度メダルを手にするところを見たいです。

 

↓ハイライト動画です。ぜひ。

www.gorin.jp